「叱ると」「怒る」はまったく別物
生徒を指導することが仕事の教師にとって「叱る」行為は避けて通ることはできない。しかし、今の時代、親からも怒られたり、叱られたりすることが少ない生徒にとっては、やみくもに「叱る」だけでは生徒の心を動かすことはできない。
生徒のやる気を削ぐことなく、行動の改善を促す「叱り方のマナー」が必要になってくる。
昔の鬼上司のようなノリで、若者を怒鳴ったり、命令したりするやり方は通用しなくなっている。そもそもたとえ相手が若者だろうと、こうした態度はマナー違反。一時的に若者を従わせることができても、気持ちはどんどん離れていく。生徒も同じ。
叱られたことがない若者が多いと言ったが、親以外の誰かに真剣に諭されたり、叱られたりした経験が少ないだけで、わかりやすく語りかけてあげることで、心を動かし、すぐに行動を改める素直さを持っている若者(生徒)もいるはずだ。こうした世代には、マナーに従った叱り方が最も功を奏すと考えられる。
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〈褒める+叱る+励ます〉で教師も生徒や部下を叱りやすくなる
生徒の気持ちを傷つけず、行動だけを改善させる叱り方は「ハンバーガー話法」が効果的である。
いきなり「〇〇さん、こんな問題も解けないのか。ダメだよ、これじゃ」と叱って本題に入ると生徒によっては委縮してしまうこともある。そのくらい気の弱い生徒が多い。
「ハンバーガー話法」は〈褒める+叱る+励ます〉の3ステップを踏むことで生徒を励ましつつ、間違った行動を指摘して改めさせる叱り方のテクニックである。
先の例では「解答への着眼点はよい。でも、ここの計算が間違っているよね。〇〇さんらしくない。しっかり頼むよ!」と、伝えたいことの前後に「褒める」と「励ます」をプラスする。
少々面倒かもしれないが、生徒の性格を見極めるのも教師の力量。特にセンシティブ(傷つきやすい)な生徒にたいしては、言い方を変えて予防策を講ずることも重要である。また、自分も部下に注文を出しやすくなり、仕事がしやすくなるという効果がある。
生徒を注意するときは、くれぐれも「怒る」と「叱る」をはき違えないことが大切である。
人間関係のマナーで言えば、感情に任せて相手に怒りをぶつけるのは礼を欠くことになるし、後々、親からのクレームが生じる。
「叱る」とは、相手の行動の悪い点を淡々と指摘して、反省を促すことである。名医や名先生と呼ばれる人ほど、叱るときは温和でにこやか。そういう人物に、人は従いたくなるのではないだろうか。命にかかわるような場合などは厳しい顔の表情できつく叱ることも必要になる。
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パワハラにならない叱り方
叱る行為も一歩間違うと、パワーハラスメントになりかねない。全国の労働局に寄せられた相談のうち「いじめ・嫌がらせ(パワハラ)」は常にトップの座を占めている。この多さはただ事ではない。誰もが一歩間違えれば、パワハラと認定される可能性があると心得ておくべきだ。パワハラにならない叱り方は次の4点に気を付けたい。
- 怒鳴ったり、モノをたたいたりしない。(電話の子機や書類を投げつけたりなど論外)
- 相手の人格や性格には深く入り込まない。
- 人によってはみんなの目の前叱らず、少し離れた場所で叱る。
- 叱る理由を簡潔に説明する。
- 一度にたくさんのことを叱らない。
叱るのは相手の間違った行動であって、それが人格批判や鬱憤晴らしに発展してはいけない。「叱る」目的は、生徒や部下を伸ばすためにある。そのことを心得て、常に冷静な態度で臨む必要がある。
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生徒指導の柱
認める・褒める・励ます・信頼する
認めることで自分自身を好きになる。生徒の存在を認めてあげる。
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指導・援助の5ポイント
- やってみせ→師弟同行、率先垂範
- 言って聞かせて→知恵の伝達
- させてみて→具体的な経験
- ほめて励まし→賞揚・認知できる意欲
- 静かに諭す→感情で叱らず、教え諭す
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言葉
言葉遣いは、その人間関係を円滑に保つための最も日常的な、最も重要な手段である。的確に言葉遣いを心がけてこそ、社会人として十分に適用する教師になれる。相手を尊重するという視点で相手と接する気持ちを忘れてはならない。
教師の発言
- 発問
- 否定
- 叱責
- 賞賛
- 承認
- 説明
- 応答
- 助言
- 命令
- 指示
- 指名
1つの言葉でけんかして
1つの言葉で仲直り
1つの言葉でおじぎして
1つの言葉で泣かされた
1つの言葉はそれぞれに
1つの言葉を持っている